Chip Tunig Box
 
1.はじめに

208 allure の EB2 エンジンは、3気筒 1,199cc の NA エンジンで、ボア×ストロークが 75.0x90.5mm とロングストロークのトルクタイプに振った設計。

出力は 82ps/5750rpm と、1.2L エンジンとしては可も無く不可も無くなんだけど、最大トルクの 12.0kgm を、2750rpm という低い回転数で絞り出すのが特色。

ただ、左の出力特性のように、2千回転付近にトルクの谷と、その後 2,500 回転辺りから急激なトルクの立ち上がりがあり、これが意外と使いにくい。

クラッチを繋いでグッと動き始め、そこから一旦加速が鈍り、少しの間を置いて急激にエンジンの回転が上がってとギクシャクする。

早めに2速に入れると、今度はアクセルを踏んでも全く加速せず、ジワジワとエンジンの回転が上がってから漸くググッと加速が始まる。

この2千回転辺りって丁度シフトアップしたくなる回転数だし、高速道路で 80km/h 辺りの回転数だし、ここがやせていて、出方もリニアじゃ無いというのはもうイマイチ。

仕方が無いので、1速で3千まで引っ張ってから2速に入れるという運転をしていたんだけど、うちの周りはアップダウンが多い土地なので、坂道発進でやっぱりトルク不足が顔を出して、トルクの谷で一瞬もたついてから急加速を始めたり、上り坂で前の車が急にスピードを落とした時など、このトルクの谷にはまり、1速に落とすにはスピードが高すぎる、でも2速ではアクセルを幾ら踏んでも加速しないという状態に陥る。

せめて後 10馬力、できれば 20馬力あれば楽なのに、要は 110ps のピュアテックターボエンジンだったらなぁ。

と言う訳で、HKS の汎用スーパーチャージャーやターボチャージャが付けられないか、純正のターボチャージャがそのまま付かないか、いっその事、廃車からターボエンジンを載せ替える事ができないか等々色々妄想していたけど、汎用のターボチャージャをワンオフで付けて貰うとしたら、最低70万〜80万という金額になるし。それなら最初から 208GTi 買うし。

という感じで長らく悶々としていたんだけど、そう言えばマップ書き換えという方法もあるよなぁとか思いながらネットを漁ってみたら、サブコンというチューンナップ機器が出てきた。

OBD2 コネクタに差し込むタイプや、エンジンルームのセンサーコネクタに差すタイプや、センサーのワイヤーに直接線を挟み込むタイプ等がある。

有名所だと、ProRacing OBD TunigBox や RaceChip 。

Tune Chip はオカルトパーツなので違うぞ(爆)。

どれもセンサーの情報を誤魔化してパワーアップさせるらしい。

OBD TuningBox は OBD2 コネクタからCAN-BAS にダミーの信号情報を流してターボのブースト圧を上げたり燃調を変えたり、RaceChip はブーストセンサー等に割り込ませてブースト圧をあげるそうだ。

でも、うちのは NA だからブースト圧は変えられないし、と思いながら探していたら、NA 用もありました。

どうやらマップセンサーの信号を誤魔化して空気の流量が多いと ECU に思わせ、燃料を多く噴かせたり、点火タイミングを進角させてパワーを稼ぐらしい。(ちなみに、マップセンサーの MAP は、Manifold Absolute Pressure)

一応謳い文句では、パワーが20%、トルクが30%アップ、燃費も 0.5〜2L/100km 向上するというので、パワーが100ps弱、トルクが 15kgm 強、燃費は今が13.5km/L ってとこだから、14.5〜18.5km/L になるって計算。

いくら何でも燃費は嘘だな。ガソリン多めに噴くんだし。

でもまぁ、果たして付けるだけで パワーが上がるんだろうか。

長い人生、「ガンスパーク」やら「ホットイナズマ」やら「アーシング」やら、色々な「付けるるだけでパワーアップ」商品に手を出し(流石に「チューンチップ」には手をださんかったけどねwww)、フラセボすら満たせなかった経験から、この手の物は期待しちゃいかんと学んでるんだが、それでもこのエンジンの特性はちょっと耐えがたく、期待せず、それでもちょっとだけ期待して買ってみる事にした。

 

2.買った

先にも言ったけどターボエンジン用は沢山あるけど、NA 用のサブコンは少ない。

国内だと、OBD2 接続の OBD Tuning Box ほぼ一択。

あっ、怪しい激安中華製は、LED がピカピカするだけ(ECUリセットするのもあるみたい)なので、除外ね。

でも、国内のショップで買うと 33,000円と結構なお値段なので、アメリカや英国の eBay を探したらありました。

OBD2 接続のが送料込み 18,000円ぐらい、で、センサーのコネクタに接続するタイプが 13,000円ぐらい。

ハーネスに直接挟み込むタイプは 3,000円ぐらいであったけど、ハーネスに傷をつけたくないので、コネクタに接続するタイプを購入。

 

 

   
3.付けた

真ん中のインテークマニホールドの真ん中に付いているのが、マップセンサー。

負圧から空気の流量を測るセンサー。

マップセンサーのコネクタを外し、Chip Tunig Box のコネクタを、マップセンサーとハーネスのコネクタに接続。

後は適当に配線と本体を固定して出来上がり。

付属の説明書はカラーコピーの1枚っぺらで、こんな内容が書いてある。

 

マップセンサーは、吸い込まれて燃料と混合される空気の温度を、吸気温センサーは、エンジンに入る空気の温度を計測します。

空気の温度が上がればノッキングしやすくなりますが、下げる事が出来れば、点火タイミングをもっとパワーが出る様に変更(進角)させることができます(ただし、低負荷時のように、MBT(Minimum advance for the Best Torque:最大トルク進角) になっていない時に限ってですが)。

これが、吸気インテークで冷たい空気を導入したり、インタークーラによって吸気を冷やす事でパワーアップする理由の一つです。

さあ、エンジンの吸音カバーを外し、マップセンサーを探し、配線を外して Speed Box を繋いで下さい。

この装置をマップセンサーと ECU との間に接続し、燃料が持つ能力を最大限に発揮させましょう。

 

■Chip Tuning Box の調整方法:

調整にはエンジンの始動、停止が必要です。

この装置は車種別に調整された状態で出荷されていますが、装置の取り付け後、必ずテスト走行し、必要があれば調整して下さい。

調整ボリウムは、左右に25回転回せます。

時計回りに25回転回すことで「最大」の設定値になり、反時計回りに25回転させることで「最小」の設定になります。

ただし、25回転を超えてもボリウムは止まりません。それ以上回しても設定値は「最大」または「最小」のままであり、そこから逆回転させることで、1回転分ずつ設定値が増減します。

エンジンに振動が出たり、設定値を増やす前よりもパワーダウンしたり、加速に段付きがあったり、3,000回転以上でのパワーが下がったりした場合は、設定値が大きすぎます。

症状が出なくなるまでボリウムを反時計回りに回し、一旦エンジンを止め、「エンジンを掛ける→1m動かす→エンジンを止める」を3回繰り返して下さい。

リモコンをお持ちでしたら、赤い線をバッテリーの +12V 端子に、黒い線をアース端子に直接繋いで下さい。

 

最初のマップセンサーとか吸気温センサーの話は一般的な説明なんだけど、なんか内容が微妙。

マップセンサーは圧力計か流速計で空気の流量を、吸気温センサーは空気の温度を測定するけど、その辺りがごっちゃ。

また調整の説明でも、「パワーダウンしたら設定値が大きすぎる」のくだりが、原文では「圧力が高すぎる」と言うニュアンスになっていて、どうもこの説明書って複数のタイプ、マップセンサー、温度センサー、ブースト圧センサーに取り付ける物に共通にしてるんじゃ無いかと疑ってる。

まぁそれはさておき、どうやらこのサブコンの原理は、マップセンサーを誤魔化して空気の流量が多いと ECU に思わせ、通常より多めに燃料を噴かせて気化潜熱による冷却を多くし、混合気の密度を上げ、ノッキングを起こしにくくして点火タイミングを進角させ、パワーアップを図るってものっぽい。

ちなみに、最後のリモコンのくだりは意味不明。遠隔でこの装置をON/OFFできるオプションがあるって事か?

 
 
4.どうだ

で、一番大事なのは「付けてどうだ」ってところ。

取付け直後は、エンジンが掛かった瞬間にいつもよりガッと吹けあがったり、アクセルの踏み込みに対してエンジンが過敏に反応したり、またアクセルを離した時の回転の落ち込みが遅かったりと、ちょっと不安定だったけど、100キロ200キロと走るにつれて、エンジンの方も人間の方も慣れてきた。

で、1,000キロ超走った現在の感じだけど、まず2千回転辺りのトルクの谷はやっぱりある。

でも、この谷の部分が底上げされていて、発進後、1速だと突然吹き上がる、2速だと中々回転が上がっていかないという感じが薄らいで、アクセルの踏み込みに追従してちゃんと、1速だとリニアに、2速でも普通に加速する。
まぁ、言っても所詮は 1.2L NA の加速ではあるけどね。

そして、トルクの谷を越えた時に、今までの様に急激に吹き上がるんじゃ無く、そろそろターボが効き始めたかなぁと言うような感じで、ググッと、マイルドにパワーが出始める。

これは乗りやすいわ。

ただ、エンジン音がちょっと変わった。

今までは低回転で高負荷を掛けるとガルガルガルとか、コロコロコロといった様な音、回転が上がった時に踏み込むと、ガオーという吠えるようなエンジン音がして気に入ってたんだけど、それがなんか、低回転ではゴー、高回転ではブオーと、普通になってしまった。

ちょっと面白くないので、今度マフラー変えよっと。